先日の10月22日に16年越しのとあるイベントがあった。
ボクが卒業した小学校の35周年記念の際に、その当時の在校生全員がタイムカプセルを埋めたのだ。そして、16年後の10月22日に開封式をして、当時の自分たちからの手紙を受け取ろうというもの。その16年後というのがまさに今年だった。
このタイムカプセルを埋めた日、先生からの通達は非常に印象的だったので覚えている。
「16年後、特に連絡などはしませんので、皆さん、この日付をよく覚えておいてください」
実際、ボクは覚えていた。何人ほどの生徒が来るかはわからないが、この日だけは仕事を休んで地元の大阪に帰ろうと決めていたのだ。ところが、意外とこの日を忘れないでいたのはボクだけではなかった。
件の10月が迫るころ、同級生から連絡が来た。タイムカプセル開封式に合わせて同窓会をやろうというのだ。嬉しい反面、不安もあった。以前、同級生らと同窓会をしたのは成人式以来だ。大島薫になったのは23歳のころ。つまり、いまの見た目で同級生らと会うのは初めてということになる。
正直、風の噂で地元でどうやらボクが大島薫だということは知られているらしい。だが、ただ噂が広まるのと、実際にみんなの前に現れるのはわけが違う。
実際に行ってみると、ほとんどみんな普通の反応だった。むしろ「うちの学校いちばんの出世株だな!」と喜んでくれている子すらいた。不思議に思って訊ねてみると、ボクがいまこうなっているのはみんなにとってさほど驚くようなことではないらしい。
「青木(ボクの本名だ)は入学当初から、みんな黒と赤のランドセルしか使ってないのに、一人だけやたら目立つ黄色いランドセルで現れてさ。昔から変わったやつだったからな」
なるほど。たしかにそんなことがあった。両親と一緒にランドセルを買いに行ったとき、日本では男の子が黒、女の子が赤を買うと教えてもらった。しかし、その売り場に、まだ当時では珍しいカラーランドセルがあり、それが唯一黄色だったのだ。ボクはなぜか断固として黄色いランドセルが欲しいといい、両親も渋々購入したのを覚えている。
そういえば、同窓会ネタとしてベタな『昔好きだった女の子に再会する』というイベントも経験した。久しぶりに会ったあの子は美しい大人の女性へと成長していて、いまは学校で保健の先生をしているという。
「青木がさ、有名になったって聞いて。インタビューとか読んでて『ボクは好きなものを着てるだけ』って答えてたのがすごく好きで、私も生徒さんにLGBTの話とかするときに使ってるんだよ」
正直、嬉しかった。久しぶりの休暇だったが、むしろもっと仕事を頑張ろうと思えた。
そういえば、過去の自分からの手紙には何が書いてあったのか、お伝えしていなかった。
将来の自分へ過去の自分からはこんな質問が届いていた。
「芸能人にはなれてますか?」