トップ > コラム >大島薫の「マイセルフ、ユアセルフ。」 > 第10回 常識のある世界でしかエロは存在し得ない

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 暑い! クーラーのない作業場からこんばんは、大島薫です。
 この時期になると自然と人々の肌の露出も増えていきますね。新宿の街中を歩いていても、たまに「え! そんな格好で外に出ていいの?」というような過激なファッションの女性を見かけることが多々あります。我々男性からすると、ついつい目のやり場に困ってしまうようなこんな場面、当の女性たちは恥ずかしくないのでしょうか。
 ここでひとつ面白い論文があります。「身体に伴う露出に関する羞恥感」について聖心女子大学教授・菅原健介氏らがまとめたものです。これは肌見せ系ファッションを例に、人間はどういったときに身体の露出に関して羞恥感を感じ、どういう場合には感じないのかを説明しています。
 大変恐縮ではありますが、引用ではなく要点だけまとめさせていただきますと、つまり露出に関する羞恥感には社会性がとても重要だということが分かる内容となっております。
 例えば、我々は街中をビキニだけで歩くことを恥ずかしいと感じますが、同じようにたくさん人がいる海水浴場でビキニになっても恥ずかしいとは思いません。つまりこれは、海水浴場で水着でいることは当たり前で、誰かを欲情させたりすることなどあり得ないと認識しているからであって、それはボクらの社会的常識に基づいて形成されたものだからです。実際に露出度の高い服を着る女性も、みんながその露出した肌に対して何も関心を惹かれていなければ何とも思わないでしょうが、街行く男性が全員その姿に振り返ったり、「ねぇちゃん、おっぱいデカいなぁ」と話しかけたりしたとしたら途端に恥ずかしく思ったりしませんか? 要は「私はここでこんな格好をすることで誰かを性的に興奮させてしまっている」と認識したとき、人は初めて羞恥を感じるのです。
 ここでボクはあることを思い出しました。常々ボクは「やってはいけないことをやるからエロいんだ」と思うことがあります。そうですね、例を挙げるとするならAVなんかによくある設定だと『旦那の葬式の後、喪服姿の未亡人を襲う』とか『いたいけな少女を軟禁して調教する』などがそうです。実際にやれば不謹慎だとか犯罪だとか言われるわけですが、人間の中には一定数そういったタブーを犯した状態を見てみたいという欲求を持つ人々がいます。
 タブー、《禁忌》とも言いますね。見るなと言われれば見たくなるし、やるなと言われればやりたくなる。こういうダメと言われたことほどやりたくなる心理を、カリギュラ効果と言います。そして、それを犯すことに我々はある種の快感を覚えます。
 つまり、エロとか、フェティシズムというのは、良識ある社会でしか形成されないということです。もちろん退廃した世界や原始的な世界でもセックス自体は存在するでしょう。しかし、社会的に成熟していない世界では、それは単純な生殖行為や性処理行動にしかなり得ません。エロを楽しむという感覚は、ある程度文化的な水準が高まってこないと生まれ得ないのです。そういう意味では、常識のある世界で非常識で破廉恥な行動を取ることこそがエロの本質と言えるのかもしれません。
 つい先日、大手AVメーカーの社長が逮捕され、かねてより騒がれていたAV出演強要問題なども相まって、関連団体がAV業界の健全化を計っていく旨の声明文を発表しました。これも時代の流れでしょうか。
 しかし、ボクは健全化されたAV業界なんかに本当の意味でエロというのは存在するのだろうかと少し疑問を抱いています。「私は自分の表現方法のひとつとしてAVに出ています!」と志高く主張するAV女優より、「借金でヤクザの人に無理やり強要されてAVに出ました……」と言ってエロいことをやらされているAV女優のほうが興奮すると思うのは、やはりボクが屈折した人間だからなんでしょうかねぇ……。
 
ボクらしく。
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