トップ > コラム >大島薫の「マイセルフ、ユアセルフ。」 > 第4回 何かに区分けして理解できるほど我々人間は単純なものではない

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 ノンケとホモとゲイとレズビアンとバイセクシャルとニューハーフとオナベと女装とオカマと変態。これらすべてを正確に説明するのは、セクシャルマイノリティー当事者としても難しい。
 ここで一つ例を挙げてみましょう。
 A. 心は男性だが、女装が趣味の性対象は女性の生物学上男性の人間
 B. 心は女性だが、まだ手術に踏み切れていない性対象女性の生物学上男性の人間
 仮にAとBの見た目を同じくらいの容姿だとすると、この二人の人間を見た第三者は同じ人種のように感じることかと思います。しかし、そこには明確な違いがあり、相容れない部分が存在するのです。
 前にニューハーフの方と飲みに行った時、同じカウンターに座っていた見知らぬ男性が彼女(ここではそう表記します)の男性的な声を聞いてこう尋ねました。
 「ああ、君は男だったんだね! 女の子かと思ったよ」
 すると、矢継ぎ早に彼女はこう返しました。
 「違うわよ。アタシは女よ!」
 彼女は女性ホルモン治療で胸が多少あるものの、まだ完全に手術を終えておらず、見る人が見ればニューハーフと分かる見た目をされていました。
 そう言われた男性は戸惑い、何とも言えない表情をしていました。その顔からは——だって、心は女でも元男なら結局男なんだろ?——というような不満の声が漏れ出てくるような印象を受けました。
 またボクの知人の女装が趣味の男性で、こんなことを言っていた方がおられました。
 「俺はさ、女装してる時は男に抱かれたいんだよね」
 そう言った彼には奥さんとお子さんがいました。ボクのそんな疑問はお見通しとばかりに彼は続けます。
 「別に男が好きなわけじゃないんだよ? たださ、男なのに女の格好をして男に抱かれてる自分ってのが好きなんだよねー」
 こうなってくると訳が分かりません。前述のニューハーフさんはもちろんのことですが、男性を愛し男性と性交渉をします。次に出てきたこの女装趣味の男性は男性に抱かれるものの男性自体を愛することはないと言います。一般の方から見て、この生物学上男性二人を見分ける術はあるのでしょうか。
 この女装の男性は、そんな自分のことを指して「ただの変態趣味」と表現されていました。しかし、その「ただの変態」と「本当に女性になりたい男性」を果たして見た目だけで区別できるのでしょうか。
 たまにこんなことを訊かれることもあります。
 「ゲイとホモって違うの?」
 同じです。ホモというのが日本で差別意識が顕著だった時代の言葉というだけで、言葉の意味自体は変わりません。その点では「ホモ」という言葉は使わずに「ゲイ」と表現しましょうなんて風潮もありますが、要するに言い方の問題で、侮辱する意味で言っているかどうかなんて人によります。
 こういった場面を見るたびにボクはどうも表面的だなと感じてしまいます。質問者の一般男性も、女装が趣味の男性も、ニューハーフさんすらも。
 女性が好きないわゆる普通の男性だって、ロリコン趣味の人もいれば熟女趣味の人だっています。これも第三者から見れば同じ《女性が好きな男性たち》です。
 いまや一昔前のように、同性愛を苦にこの世を去る人がいたなんて時代があったとは思えないほど、この世を取り巻く性の多様性は理解されつつある気がします。
 冒頭のAとBの違いを理解し、それを表現する言葉も出てきました。Aの場合はTS(※トランスヴェスタイト)、Bの場合はMtF(※エムティーエフ)なんて呼んだりしますね。
 またTSの中にも男性が好きな人もいれば女性が好きな人もいますし、その両方が好きなバイセクシャルの方だっています。いまだそこまでを一度に表現する言葉はないのですが、そのうち作られるかもしれません。
 しかし、ボクはこのカテゴリーを増やす最近の傾向が、カテゴリーを失わせる未来へ向かうための過程を自ら辿っているように思えてなりません。
 四角形を想像してみてください。この四つの直線のどこか一辺に、角を一つ増やすと五角形になります。そうして角をどんどん増やしていくとだんだんとその形は丸に近づいていくはずです。角を無限に増やすことで、むしろ角がなくなったような見た目になってしまうわけですね。
 ボクはいまこの現象が、世の性の認識に起きているような気がするのです。結局「人それぞれ」なんだというありきたりな結論を導き出すためなら、最初から何かに区分けする必要はないのに。
 名前を付けただけで理解できるほど、単純なものではないんです。ノンケとホモとゲイとレズビアンとバイセクシャルとニューハーフとオナベと女装とオカマと変態。つまるところ、我々人間は。
 
 
 
ボクらしく。
大島 薫・著

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