「この人は前世でクラスメイトだったのかなぁ」
タクシーに乗ると、運転手さんに対して先述のようにふと思うことがあります。目的地までの少しの時間、無言で運転する人もいれば、何か話しかけてきて盛り上がることもある。
自分の人生の貴重な数十分を費やしているのだから、きっとこの人とは前世で名前を覚えている程度のクラスメイトの関係性だったかも? とか、同じ街に住むけど数回しかすれ違ったことのない住民だったかも? とか、話が盛り上がったりすると、半年間通った習い事の先生だったかも? とか。いずれも妄想の中の前世の話です(笑)。
そんな妄想を普段から炸裂させている私ですが、先日、終電を逃し乗り込んだタクシーでの出来事。
タクシーに乗り目的地を告げて、しばらく無言のまま車内で過ごし、「この人は前世で同じマンションの住人だったけど住んでいる時期がずれていた人かな」と思ったり、別のことを考えている時に、目的地もほど近くなったところで信号待ちになりました。
夜中なので当たり前ですが外は暗く、止まった車内はとても静かでした。
その時、突然運転手さんが訊いてきました。
「お客さん、霊感とかって信じます?」
「は、はぁ。どうしてそのようなことを訊くんですか?(心の声:はっ!? 霊感んん!? 何言い出すんだこの運転手!! 怖いよ怖いよ、ここで降りようか、いや待てよ、ここで変なものが見えるとかなら降りると余計怖いわ!!)」
「いやすみません、実はお客さんを乗せる直前に降りた人が、突然私の家族構成とか、最近腰がちょっと痛いんですけどそのこととか、こちらが何も言っていないのにピタリと当ててきて。私、今までそういった霊感的な経験がないものですから、そういうことってあるのかな、と思いまして...」
「(心の声:なんだ、怖い話じゃなかった)ああ、あると思いますよ、私の周りにそういう人多いですし(心の声:私とか母とかスピリチュアル友達とか)。その人は他に何か言ってましたか?」
「いえ、それだけ告げて降りて、そしたらすぐお客さんが乗ってきたんですけど...」
「けど?」
「その、前に乗せたその人と、お客さんがソックリなんですよ」
「へぇー、そんなこともあるんですねぇ(心の声:なんじゃあああああああそりゃあああ! ヤバイ、この運転手変な人だよ、降りよう、今ここで降りよう)」
「だからさっきから私、鳥肌が...」
「いやいやいや(笑)、私、初めて乗りましたよ? 髪型が似てる人だったんじゃないですか?(心の声:いきなりそんなこと言われる私のほうが怖いわ! ボケ!)」
「はぁ、それにしてもなぁ...」
「あ、ここで大丈夫です、ここで降りますね(心の声:早く逃げよう)」
「あ、ここでいいですか? ×千円になります」
と、支払いの時に運転手さんがこっちを振り返ったのでお顔を見たのですが、どうも顔色が悪い。小さい頃、ご近所のおじさんの不調を言い当てた時の顔色に似ている。
これは伝えておかないと。
「ありがとうございました、あ、あと運転手さん、できるだけ早いうちに病院に行ったほうが良いと思いますよ」
「え? な、何なんですかいきなり! わ、分かりました、明日行きます! 今日は変な日だなぁ...」
そう言って運転手さんはドアをバタンと閉めました。