Rooftop ルーフトップ

COLUMN

十六回「同じ時代」

第四十六回「同じ時代」

2016.07.01

 このコラムの最初のほうに、小学校の頃仲良かったゆかりちゃん(本名)という女の子の話を書いたと思うのですが、このゆかりちゃんの他にもSちゃん(仮名)というちょっとおませな女友達がいました。
 Sちゃんのお部屋にある日遊びに行った時のこと。お部屋でひとしきり遊んだ後に、Sちゃんのお母さんがお部屋に運んできてくれたジュースなどを飲みながらくつろいでいたら、「よこたん、こういうのって知ってる?」とおもむろに何かの雑誌を見せてきました。
 なになに? と覗くと、そこには裸の女の人の写真がたくさんありました。
 他にも、まぁそうですね、端的に申し上げて性行為中の写真とか、エッチな描写の漫画とか、とにかく小学生が見るには刺激の強すぎるものがそこには繰り広げられていました。
 「え、え、なにこれ?」
 驚きつつも目が離せません。
 「私のパパがね、こういう本を買うとママに怒られるけど、絶対にSの部屋だと見つからないから隠させてくれって置いていくの」と、しれっとSちゃんは言っていました。けっこうそれって今考えると大変なことですよね、おそらく私が初めてエッチな写真を見たのはSちゃんの部屋だったと思います。
 ゆかりちゃんとSちゃんも仲が良かったのだけれど、二人はませていたのでとにかく性に関する知識は同級生の中でも飛び抜けていて、私はいつもクラクラする思いで二人の話についていこうとしたのですが(そして私は道を間違え、BLに向かっていきました。セックスは男性同士でするものだと中学生まで思い込んでいました)、二人にはある一つの共通点がありました。
 それは、俳優の織田裕二さんが好きな男性のタイプだったのです!
 「裕二クン(織田)、イケてるよね」
 「ちょー分かる」
 みたいな感じで、裕二クン(織田)がいかにかっこいいか、ある時は夢に出てきてお姫様抱っこしてくれただのという話で盛り上がっておりました。
 私は残念ながら裕二クン(織田)の魅力は分からなかったのですが、なんとなく当時のませた小学生女子の何らかに訴えかける能力を持っている人なのかもと思っていました。
 しかしある時、異変が訪れます。
 ゆかりちゃんが突如として、今で言う「歴女」になってしまったのです。
 と言うのも、ティーン向けのラノベを読むのにハマっていた彼女は、女子高生が戦国時代にタイムスリップして織田信長と恋に落ちるというストーリーのラノベに心酔してしまい、完全に織田裕二から織田信長にシフトしてしまったのです。
 そしてある日、「よこたん聞いて! 気づいてしまったの、私が好きになる人は、苗字が織田だということに!」とものすごい閃きを得たように言ってきましたが、誰でも最初の段階で気づいていました。
 ゆかりちゃんは手帳に信長の肖像画の切り抜きを挟んで眺めてはため息をつき、休み時間には信長に関する書物を読み漁るようになりました。
 「私、なんで戦国時代に生まれなかったんだろう…」と窓の外を眺めながらつぶやく彼女のアンニュイな表情が忘れられません。
 中学校に上がっても彼女の信長好きは止まらず、歴史のテストは必ず満点を取っておりました。
 でもある日、やっぱり裕二クンという結論に至っていました。
 それは、今同じ時代を生きているから、という理由で。好きな人と同じ時代を生きるって、実はすごいことなんだよと彼女に教えられました。
 

Blue Forest

FAMC-228
価格:2,200円+税
発売・販売:KADOKAWA
2016年6月15日(水)発売

amazonで購入

【収録曲】
01. 硝子のベッド(作詞・曲・編曲:浜崎容子)
02. 雨音はショパンの調べ(作詞:Paul Mazzolini/松任谷由実 作曲:Pierluigi Giombini 編曲:浜崎容子)
03. ANGEL SUFFOCATION(作詞:菊地成孔 作曲:浜崎容子 編曲:浜崎容子・成田忍)
04. 誰より好きなのに(作詞・曲:古内東子 編曲:浜崎容子・おおくぼけい)
05. Forever Us(作詞・曲・編曲:浜崎容子)
06. ねぇ(作詞・曲・編曲:服部峻)
07. Lost Blue(作詞・曲・編曲:浜崎容子)

 浜崎容子の6年ぶりのソロ・アルバム『Blue Forest』が好評発売中(FAMC-228/2,200円+税)。菊地成孔が作詞し、成田忍と浜崎が編曲する「ANGEL SUFFOCATION」、服部峻が作詞・作曲および編曲する「ねぇ」などの新曲を始め、小林麻美「雨音はショパンの調べ」、古内東子「誰より好きなのに」のカバー・バージョンを収録。「誰より好きなのに」のアレンジは浜崎とおおくぼけい(アーバンギャルド)が手がけている。

LIVE INFOライブ情報

SHINJUKU LOFT 40TH ANNIVERSARY『乙女の事情スペシャル』
■7月13日(水)新宿LOFT(with:キノコホテル、BILLIE IDLE?、Maison book girl)

アーバンギャルドのフラッシュバック・ワンマン Vol.3『少女の証明』
■7月30日(土)渋谷STAR LOUNGE(通常公演、追加公演ともにSOLD OUT)

代官山UNIT 12th ANNIVERSARY LIVE『ご安心ください vol.1』
■8月5日(金)代官山UNIT(with:藤井隆)

アーバンギャルド Presents 鬱フェス 2016
■9月18日(日)TSUTAYA O-EAST(with:オーケンギャルド、ムーンライダーズ、大槻ケンヂ、PANTA、真空ホロウ ACOUSTIC BAND and more...)

*その他のライブはオフィシャルサイトをご参照ください。

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  • おじさんの眼
  • ロフトレーベルインフォメーション
  • イノマー<オナニーマシーン>の『自慰伝(序章)』
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  • 鈴木邦男(文筆家・元一水会顧問)の右顧左眄
  • レズ風俗キャストゆうの 「寝る前に、すこし話そうよ」
  • 月刊牧村
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