Rooftop ルーフトップ

COLUMN

十五回「超能力」

第四十五回「超能力」

2016.06.01

 私がまだ小学校の低学年だった頃は、超能力者が行方不明の人を見つけ出すというようなドキュメント番組と言うか、そのような題材をエンタメにしてしまってよいのか、とにかくそんな番組がけっこう頻繁にやっていて、斯く言う私も超能力者が生出演! とか、UFOは実在するのか!? 科学か超常現象か今夜判明! みたいな番組をかなりワクワクしながら見ていた子どもだったのですが、どうして今はそういう番組が減ってしまったのですかね? 私がTVを見なくなってしまっただけで、まだありますか?
 と、話が逸れてしまいましたが、そういった番組はだいたい生放送で、当時はFAXで行方不明者の目撃情報を募ったり、体験した超常現象を視聴者にも語らせるような作りが多くて、見ている側としてもかなりスリリングと言うか、緊張感を持って番組を見守っていた記憶があります。
 ある時、ヒーリングという能力を持つ超能力者が生出演していた番組があって、VTRでその超能力者の力がいかにすごいのかをとくとくと見せつけられ(その人の名前はもうすっかり忘れてしまいましたが)、VTRが終わりまして司会者の人が、「さぁ、CMの後はいよいよ○○さんによる、遠隔でのヒーリングが開始します! 視聴者の皆様、TVの前でどうぞその力を受け取るご準備を!」みたいな流れでCMに入りました。
 夕食が終わる頃の時間で、もちろん家族で番組を見ていたのですが(無論私は前のめりでした)、当時の私はクラシックバレエを週のほとんど通うような生活をしていて、足の土踏まずの上辺りに骨が出っ張ってませんか? その部分がどうにも痛くてたまらなくって、レッスンやストレッチにも支障をきたし始めるほど痛く、手で撫でるだけでもズキズキと痛み、病院に行っても原因が分からないような状態でした。
 「ねぇお母さん! この人の遠隔ヒーリングでここの骨の痛みが治るかも!」と、私は即効で靴下を脱ぎ、CMが終わるのを待機していました。そしてCMが明け、司会者がその○○さんがどのような能力を持つのか改めて紹介して、というもどかしい時間があり、ついに遠隔ヒーリングの時間がやって来ました。
 ○○さんの口から「まず、体の痛みがある場所に手をかざしてください。そして私が今から念を送りますので、TVの画面に向かってもう片方の手をかざしてください。集中して、私のエネルギーを受信する気持ちでいてください。一人で無理のある体勢になる場合は、誰か別の人の手を借りて、先ほど述べたように手をTVと患部にかざしてください。それでは、今から○分間(何分か忘れました)念を送ります」
 と、その○○さんがTVカメラに向かって目を閉じ、両手を広げた状態で謎のヒーリング・ミュージックのようなものが流れ、テロップで「遠隔ヒーリング中です。画面に手をかざし、エネルギーを受け取ってください」というような文字が表示され、異様な光景が数分間続きました。
 エネルギーの受信は母が請け負ってくれて、TV画面に手をかざし、私の足の痛むところにもう片方の手をかざすというような、傍から見たら本当に笑える状態が数分続き、しかし驚くべきことに、母の掌が猛烈に熱くなってきたのです!
 「なんかお母さんの手がめちゃ熱いんだけど!」
 「お母さんも分からないけど、かざしてる手がビリビリするのよ!」とキャアキャア言いながら数分間の遠隔ヒーリングは終了。するとどうでしょう。なんと、あれほどに痛かった足が全く痛まなくなったのです!! これ、本当ですからね? 歩いても何しても触っても全然痛くないのです!
 「信じられない!! あんなに痛かったのに全然痛くないなんて!!」
 番組には、○○さんの遠隔ヒーリングによって私のように長年悩まされていた体の痛みが治っただの、麻痺していた腕が動かせるようになっただの、信じられないような話と感謝のメッセージがFAXとお電話でひっきりなしに届いていました。
 とにかく翌日のバレエのレッスン、いや、靴を履くのでさえ痛かった私はもう天にも昇るような気持ちでその超能力者さんに感謝しました。名前は忘れましたが。
 でも翌日、学校ではこの話はしないことにしました。なぜなら男子がその超能力者はエセだとか話しているのを聞いたからです。
 でも、あれはなんだったのでしょうか。その番組見ていた人いますか? あれ以来本当に痛みがなくなったし、あんなに母の手が熱くなることもそれ以来ありません。
 

Blue Forest

FAMC-228
価格:2,200円+税
発売・販売:KADOKAWA
2016年6月15日(水)発売

amazonで購入

【収録曲】
01. 硝子のベッド(作詞・曲・編曲:浜崎容子)
02. 雨音はショパンの調べ(作詞:Paul Mazzolini/松任谷由実 作曲:Pierluigi Giombini 編曲:浜崎容子)
03. ANGEL SUFFOCATION(作詞:菊地成孔 作曲:浜崎容子 編曲:浜崎容子・成田忍)
04. 誰より好きなのに(作詞・曲:古内東子 編曲:浜崎容子・おおくぼけい)
05. Forever Us(作詞・曲・編曲:浜崎容子)
06. ねぇ(作詞・曲・編曲:服部峻)
07. Lost Blue(作詞・曲・編曲:浜崎容子)

 浜崎容子の6年ぶりのソロ・アルバム『Blue Forest』が6月15日(水)に発売(FAMC-228/2,200円+税)。菊地成孔が作詞し、成田忍と浜崎が編曲する「ANGEL SUFFOCATION」、服部峻が作詞・作曲および編曲する「ねぇ」などの新曲を始め、小林麻美「雨音はショパンの調べ」、古内東子「誰より好きなのに」のカバー・バージョンを収録。「誰より好きなのに」のアレンジは浜崎とおおくぼけい(アーバンギャルド)が手がけている。

LIVE INFOライブ情報

マイナス人生オーケストラ主催ツーマン企画 第一弾
大惨事世界大戦 〜少女地獄編〜
CAST:マイナス人生オーケストラ vs アーバンギャルド
■6月5日(日)新宿BLAZE

浜崎容子ソロアルバム『Blue Forest』発売記念ライブ
Into the Forest〜Dark Blue Door
■6月18日(土)大阪・北堀江Vijion
■6月19日(土)名古屋X-HALL
■6月30日(木)六本木Super Deluxe

アーバンギャルドのフラッシュバック・ワンマン Vol.3『少女の証明』
■7月30日(土)渋谷STAR LOUNGE

アーバンギャルド Presents 鬱フェス 2016
■9月18日(日)TSUTAYA O-EAST

*その他のライブはオフィシャルサイトをご参照ください。

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