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編集無頼帖

『パンク侍、斬られて候』の極爆上映を堪能

2018.07.05

image1.jpeg石井岳龍監督最新作『パンク侍、斬られて候』を公開初日に立川シネマシティ2で観てきました。
ラッキーなことに試写も鑑賞させていただいたけどまた観たかったし、観るなら前日の『爆裂都市 BURST CITY』最響上映@Zepp DiverCityでも監督がお勧めしていた立川シネマシティ2の極爆上映が良いだろうと思っていたのですが、台詞も音響も臨場感が凄まじくて、まるでライブの生音を聴いているような感覚。あとやっぱりエンディングの「ヘイ、ジョニー!」の掛け声とともに始まる「アナーキー・イン・ザ・UK」を大音量で聴くと無条件いアガる!

まぁとにかく面白いですよ、『パンク侍、斬られて候』。
お世辞でも何でもなくとてつもなく面白い娯楽大作なので、この文章を不運にも見てしまったあなたはぜひ鑑賞してください。思い出インマイヘッドのバイアスがかかってる『爆裂都市 BURST CITY』なんて余裕で超越してますよこれ(ルースターズに青春を捧げた人間の言うことなので信用してください)。
時代劇なのに現代風刺でもありSFオペラ風でもありとにかく奇想天外で最後に全部を薙ぎ倒してぶっ壊す……石井監督が枯れることなど微塵もなくてキレッキレなのが最高。
とりわけ黒和藩と猿軍団 vs 暴徒と化したネオ腹ふり党の壮絶を極めた世紀の破怒流(バトル)はいかにも石井監督らしい荘厳な見せ場で、「宇宙が砕けますよ」という惹句に偽りなしの大団円。

鑑賞した方の評価が0点か100点のまっぷたつなのもこの映画らしくて面白い。
理路整然とした意味を映画に求める人には不向きかもしれないけど、得体の知れないエネルギーを味わいたい人、知覚の扉を開けたい人にはぜひお勧めしたいです。
考えてみれば自分も昔は映画にしろ音楽にしろ意味を求めたがるタイプだったんですが、「Don't Think, Feel!」の精神がやっとわかりかけてきたような気がします。
取材対象の作品と接する場合、どうしても「Think」してしまう。時にはご本人が気にも留めていないことまでどこまでも「Think」する。となると、作品そのものを心から楽しめなくなるんですよね。インタビューしてから時間が経って頭を空っぽにしてその作品を聴くと、まるで印象が違うなんてこともよくあります。要するに「Think」から離れて純粋に音楽を楽しんでいるからでしょう。

『パンク侍、斬られて候』もひとまず何も考えず、その圧倒的な画と音に身を委ねてみるのがいいと思います。
やれ大コケだの低空発進だのとネガティブなニュースもありますが、その記事を読んで映画を鑑賞したつもりになるのがいちばん良くないですよね。自分の五感で作品を受け止めて、それで気に入らなければ仕方ない。相性もあるし、こういうのは味覚と同じで人それぞれです。
とにかくぼく自身はもの凄く楽しめた。石井監督の新たな傑作が誕生したと思うし、巨額を投じてあれだけ酔狂(と書いてバカと読む)なことをやり遂げた時点で勝ちですよ!

PROFILEプロフィール

椎名宗之(しいな むねゆき):音楽系出版社勤務を経て2002年1月に有限会社ルーフトップへ入社、『Rooftop』編集部に配属。現在は同誌編集局長/LOFT BOOKS編集。本業以外にトークライブの司会や売文稼業もこなす、前田吟似の水瓶座・AB型。

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