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ラストインタビュー 2013.10.28

image.jpeg「ほら、オレの話は呑んでる時にもできるんだから、他のメンバーの話を拾って!」
ぼくがブラッドサースティ・ブッチャーズの吉村さんからインタビュー中によく言われた言葉である。
ブッチャーズはとかく吉村さんのワンマン・バンドに思われがちだが全くそんなことはない。特異すぎる射守矢さんのベースとダイナミックな小松さんのドラムと心地好く歪みつつも端正なひさ子さんのギターがあってこそのブッチャーズで、あの4人が揃って初めてブッチャーズ・サウンドが成立するのは今さら言うまでもないだろう。

だからこそ『youth(青春)』にまつわるインタビューは難しかった。
新作のコンセプトや方向性、制作過程の諸々を把握していた吉村さんは不在だし、吉村さんにしか分からないことを3人が答えられるはずがない。口下手というわけではないが3人とも多弁なほうでもない。
ビートルズが「Free as a Bird」の制作にあたって、「自分のパートを早々と済ませたジョンが『後はやっといてくれ』と休暇に出かけてしまった」というふうに考えたとポール・マッカートニーが話していたが、吉村さんのいないブッチャーズへインタビューするにあたってぼくも同じような気持ちで臨んだ。
だが、まるっきりその体で押し通すこともできない。個人的には今もなお吉村さんの不在を到底認めるわけにいかないと考えているが、事実は事実として受け止めなくてはいけない瞬間が話を訊く上で否応にもある。また、その場で訊くべきではないデリケートな事柄も当然の如くある。
制約というほどではないものの、それに近い枷みたいなものが前提として在ったインタビューだったのは間違いない。
でも、メンバー3人に新作について話を訊くんだという心づもりはずっと変わらなかった。だから某誌で健さん&順さんのW谷口がブッチャーズの新作について語り合う企画があると聞いて、そうか、そんな発想もあったかとハッとさせられた。3人ブッチャーズにインタビューすること以外、選択肢は考えられなかったからである。

まぁ、結果的にはぼくの技量のなさで期待していた以上の話は引き出せなかったけれども、不思議なパワーバランスで成り立つブッチャーズというバンドのユニークさを伝える内容にはなったんじゃないかと思う。そして不在だからこそ尚のこと際立つ吉村さん独自のパーソナリティ。それは如実に伝わるはず。
掲載は11月1日から配布開始のRooftop。同じ日にwebでも完全版の記事をアップします。

ぼくがブッチャーズ単体にインタビューして記事にするのは実質的にこれがたぶん最後だろう。
あれほど熱を入れてバンドを追いかけ、公私ともに世話になった存在は他にない。自分にとってそんなバンドはもう二度と現れないんだろうなとも思う。
だからと言って、これで彼らの存在が過去形のものになるわけでは決してない。むしろ自分の中ではこれまで以上に大きな対象として、高くそびえ立つ壁のようなバンドになる気がする。
『youth(青春)』と題された作品がもたらす昂揚感と余韻が生半可なものではないことをあなたは実感するだろうし、その手助けとしてぼくのインタビュー記事が存在するのならこんなに嬉しいことはない。
いずれにせよ、今年の11月14日はいつになく賑やかな一日になりそうだ。

プロフィール

椎名宗之(しいな むねゆき):音楽系出版社勤務を経て2002年1月に有限会社ルーフトップへ入社、『Rooftop』編集部に配属。現在は同誌編集局長/LOFT BOOKS編集。本業以外にトークライブの司会や売文稼業もこなす、前田吟似の水瓶座・AB型。

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