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トップ編集無頼帖ARB 3 NIGHTS〜Live at Shinjuku LOFT, 23.24.25. July. 1999〜

編集無頼帖

ARB 3 NIGHTS〜Live at Shinjuku LOFT, 23.24.25. July. 1999〜

2012.01.13

ARB_main.jpg1998年1月14日、ARBはまだ小滝橋通りにあった旧・新宿ロフトにて8年振りに活動を再開させた。石橋 凌(vo)とキース(ds)のオリジナル・メンバーに加え、元MUTE BEATの内藤幸也(g)、ユニコーンのEBIこと堀内一史(b)という鉄壁の布陣となった新生ARBは、結果的に8年2ヶ月という歴代最長の編成となる。これはつまり、再始動後のバンドに同窓会を思わせるような後ろ向きなスタンスは微塵もなく、ストリートに根差した最新鋭のロック・バンドとして充実した活動を体現できていた証左だと言えるだろう。
1月25日に発表となる『ARB 3 NIGHTS〜Live at Shinjuku LOFT, 23.24.25. July. 1999〜』は、この新生ARBがひとつのバンドとしてテンションもコンディションも良い具合に固まり、脂の乗ってきた時期のライヴを記録した貴重な音源である。
復活第1弾マキシシングル『TOKYO OUTSIDER』と13thアルバム『REAL LIFE』を発表した後、"REAL LIFE TOUR '98"、"ROCK OVER 九州"と立て続けに全国を縦断した彼らは、途中にライヴ・ヴィデオ『ARB is BACK!!』とマキシシングル『INFINITELY』のリリースを挟んで"ROCK OVER 四国"を敢行するなどツアーに明け暮れ、8年もの間復活を待ち望んできた"ARB KIDS"と呼ばれるファンはバンドの再出発を熱烈に迎え入れた。また、それらの精力的な活動を通じて解散前のARBを知らない若いファンを数多く獲得したこと、『REAL LIFE』が過去最高のセールスを記録したこともメンバーにとっては大きな自信に繋がったはずである。

1999年7月23日(金)、24日(土)、25日(日)の3日間、歌舞伎町へ移転して間もない新宿ロフトにARBが出演したのは、そんな快進撃を続けていた頃だ。マキシシングル『反逆のブルースを歌え』の発表直後、14thアルバム『EL DORADO』の発表を直前に控える暑い夏の盛りだった。23日はIn the Soup、24日はグループ魂、25日はTHE GROOVERSとの2マンであり、セットリストは3日とも違う趣向。新旧レパートリーのバランスが絶妙だった構成を今顧みると、1983年12月に行なわれた"アッパーカットツアーデラックス〜3日で歴史を見せてやる"のアップデート・ヴァージョンと言えなくもない。場所は変われど、ずっと活動の基盤だったロフトで改めてバンドの軌跡を見せつけるという歴史の縦軸、若手のバンドに比肩するヴァイタリティを有した証としての横軸を交差させた、まさにARBにしか成し得ないスリリングな3日間だった。
一角のキャリアを築き上げたバンドの風格と、まるでデビューしたばかりのような瑞々しさが一体となった演奏はこの時期のARBの特性をよく表しており、未だ色褪せることのない珠玉の"WORK SONGS"の数々を聴くと、ARBの意志を受け継いだバンドの不在を今さらながらに思い知らされる。ARBの明確なフォロワーが存在しないということ自体、彼らがオリジナリティの塊だったことを雄弁に物語っているのだ。

ARBが早い段階からワン&オンリーな存在だったことは、本作に収録されたボーナストラックからも窺える。2ndアルバム『BAD NEWS』に収録された「Tokyo Cityは風だらけ」のライヴ・レコーディングが旧・新宿ロフトで行なわれたのは1980年3月9日。凌、キース、田中一郎(g)、サンジこと野中良浩(b)の4人編成となったARBは、再起を懸けて発表した3rdシングル「魂こがして」のB面曲「Tokyo Cityは風だらけ」をライヴ・ヴァージョンとしてアルバムに収録しようと試みたのだ。
当日は3回にわたって「Tokyo Cityは風だらけ」が演奏され、歌と演奏のコンディションや臨場感のあるオーディエンスとの掛け合いから判断して1回目に演奏されたテイクが採用された。
当日のライヴを記録していたオープンリール・テープの存在は長らく忘れられていたが、この度ARB OFFICEの倉庫で発見され、遂に封印が解かれることと相成った。そのテープの中から今も鑑賞に耐え得るテイクを精選したのが、今回特別に収録された「Tokyo Cityは風だらけ」のアナザー・ヴァージョンである。演奏は荒削りだが、バンドが内包するプリミティヴなロック・アティテュードが音の端々から否応なく伝わってくる。それは有機的なアンサンブルとして昇華し、手を伸ばせば届くほどの距離にいるオーディエンスとの一体感へと繋がっている。退路を断ったバンドの凄みと尋常ならざる気迫が充分に感じられるし、すでにこの頃のARBがひとつの高みに達しつつあることがよく分かる。
当時の秘蔵音源はあらかた出し尽くされていたと思われていただけに、1曲とは言えこの貴重なライヴ音源はファン垂涎の歴史的記録と言えるだろう。

図らずも新旧の新宿ロフトにおけるライヴのコンピレーションとなった本作だが、それもARBと新宿ロフトの深い関係性を思えば至極当然のことと思える。シンコー・ミュージックから独立したARBはライヴ活動の基盤を新宿ルイードから新宿ロフトへと移行し、月一ペースでレギュラー出演するようになるのだが、「ロフトというスペースに恩義的な部分を感じていた」と凌自身が後年語っているように、ARBとロフトは分かち難い密接な関係を持つことになる。ロフトの打ち上げで知己を得た仲間たちからインスパイアされた「LOFT 23時」はもとより、「スタンディング・オン・ザ・ストリート」や「ドリーミング・ベイビー」といったロフトから眺めた新宿の情景を綴った楽曲が後に発表されたことからも、ARBにとってロフトが如何に特別な意味を持つライヴハウスだったかが分かるはずだ。

常に社会的弱者の視座を立脚点とし、人間の自由を踏みにじる存在に向けて檄を飛ばすメッセージ性の高いARBの歌は、未曾有の国難と閉塞感に見舞われた今の日本にこそ大きな作用をもたらすように思えてならない。ARBという日本のロック史上傑出したバンドの独創性や卓抜したパフォーマンスを後世に語り継ぐ意味でも、このライヴ・コンピレーションは大きな意義を持つ逸品と言えるのではないだろうか。

arb_3nights.jpgARB 3 NIGHTS
〜Live at Shinjuku LOFT, 23.24.25. July. 1999〜

LOFT RECORDS LOCA-1018〜1020(CD3枚組)/4,200円(税込)
2012年1月25日(水)発売
1999年7月23日(金)、24日(土)、25日(日)の3日間、歌舞伎町へ移転して間もない新宿LOFTにARBが初めて出演した際のパフォーマンスを精選して収録したCD3枚組。

Live info.
新宿LOFT 35周年記念特別企画
〜波瀾万丈〜 KEITH 還暦 LIVE PARTY

2012年2月5日(日)新宿LOFT
OPEN 17:00/START 18:00
ADV ¥5000/DOOR 未定(共にDRINK代別)
【出演】THE ROCK BAND(仲野茂、藤沼伸一、寺岡信芳、小林高夫)/PERSONZ(JILL、渡邉貢、藤田勉、本田毅)/Groovin'(SHY、古見健二、 KEITH)/稲田JOE(G.D.フリッカーズ)/井上アツシ(ニューロティカ)/内海利勝/EBI(ユニコーン)/SHIHO/ジェームス藤木(Cools)/内藤幸也(SDR)/仲井戸麗市/他
問い合わせ:ホットスタッフ 03-5720-9999
●Pコード:155-637/Lコード:70269

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PROFILEプロフィール

椎名宗之(しいな むねゆき):音楽系出版社勤務を経て2002年1月に有限会社ルーフトップへ入社、『Rooftop』編集部に配属。現在は同誌編集局長/LOFT BOOKS編集。本業以外にトークライブの司会や売文稼業もこなす、前田吟似の水瓶座・AB型。

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